2019年8月、『アストラルチェイン』がNintendo Switch専用タイトルとして発売された。
開発はプラチナゲームズ。ディレクターは『ニーア オートマタ』のリードゲームデザイナーを務めた田浦貴久、神谷英樹が監修を担当、キャラクターデザインは桂正和。これらを並べると、大ヒットの要素をすべて備えているように見える。しかし、最新の公式発表によると、世界累計売上は約130万本。批評家から受けた高い評価に比べ、商業的な成功は控えめなものにとどまった。

批評的には高い評価を得たこのゲームが、なぜプラチナゲームズの作品の中でも見過ごされがちなタイトルになったのか。そのユニークな戦闘システムの特徴は? 2026年現在、遊ぶ価値はあるのか? 本稿では、基本情報、ゲームプレイ、ストーリー、市場成績、IPの現状までを網羅する。
I. 基本情報と開発陣
- タイトル: アストラルチェイン(Astral Chain)
- 開発元: プラチナゲームズ
- 発売元: 任天堂
- プラットフォーム: Nintendo Switch(専用)
- 発売日: 2019年8月30日
- ジャンル: アクション
- ディレクター: 田浦貴久
- 監修: 神谷英樹
- キャラクターデザイン: 桂正和
主なスタッフ:
田浦貴久がディレクターを務めた。それ以前は『ニーア オートマタ』でリードゲームデザイナーとして戦闘部分を担当。彼にアクションを任せられることが、品質の高さを裏付けていた。
神谷英樹は監修。『デビル メイ クライ』『ビューティフル ジョー』『ベヨネッタ』など、アクションゲーム界で最も尊敬される名前のひとつである。
桂正和はキャラクターデザインを担当。代表作に『I”s』『ZETMAN』『電影少女』。彼の描くスタイリッシュで独特の美意識は、一般的なアニメ調のデザインとは一線を画す。
この3人の組み合わせは、発表当初からコアなアクションファンの注目を集めた。
II. コアとなるゲームプレイ:鎖とレギオン
『アストラルチェイン』の最もユニークな特徴はレギオン(Legion)である。異界から呼び出した従魔のような存在。プレイヤーは特殊警察組織「ネウロン(Neuron)」の隊員として、レギオンと共に戦う。精神的な鎖で結ばれており、それは武器であり絆でもある。

戦闘の核となるのは「2体同時操作」。プレイヤーは主人公を操作し、レギオンは鎖を通じて自動的に連携攻撃を行う。左トリガー(ZL)でレギオンの位置取りと指示を出し、右側のボタンで主人公の攻撃アクションを担当する。熟練には調整力とタイミングが求められる。
レギオンには5つのフォームが存在し、それぞれ異なる戦闘スタイルを持つ。
| フォーム | レギオン | 特徴 | 得意な状況 |
|---|---|---|---|
| ソード | ![]() | バランス型近接 | 初心者向け、汎用 |
| アロー | ![]() | 遠距離射撃 | 敵を引き離す戦術 |
| ビースト | ![]() | 高速移動+騎乗 | 移動、コンボ継続 |
| アーム | ![]() | 高威力・ガードブレイク | 装甲敵 |
| アックス | ![]() | 高防御・高ダメージ | 正面からの打ち合い |
各フォームには個別のスキルツリーがあり、戦闘中に切り替えることで様々な敵に対応できる。戦略的な深みを持ちながらも、敷居は高くない。
III. ストーリーとダブル主人公システム
世界観: 近未来。地球は異界からの生物に汚染され、人類は人工の巨大浮島「アーク」へ逃れた。プレイヤーはネウロンの新米警官として、捜査や市民の保護にあたりながら、次第に大きな陰謀へと巻き込まれていく。
ダブル主人公システム: ゲーム開始時に双子の兄妹どちらかを選べる。選ばなかった側のキャラクターがストーリーの鍵を握り、フルボイスで重要な役割を演じる。一方、プレイヤーが操作する主人公は沈黙キャラであり、アクションや表情で感情を伝える。

この仕様については賛否が分かれる。他のキャラクターはしっかり声があるのに自分だけ無口だと没入感を削ぐという声がある一方、スタイリッシュな戦闘そのものが主人公のセリフであり、気にならないという意見もある。
桂正和によるキャラクターデザインは独特の存在感を放つ。衣装や色使い、全体的なビジュアルは彼の作家性が強く表れており、よくあるアニメ調とは一線を画す。
IV. レビュースコアと市場成績

発売直後、メディアの評価は非常に高かった。
- Metacritic: 88点
- IGN: 9/10(「今の世代で最高のアクションゲームのひとつ」)
- Game Informer: 9/10
- GameSpot: 8/10
Metacritic 88点というスコアは、『アストラルチェイン』をその世代で最高評価のアクションゲームの一角に位置づけている。
しかし売上は同じ高さには到達しなかった。
- 日本初週のパッケージ売上:32,236本
- 最新の公式発表によると世界累計約130万本
参考までに、同世代のSwitchタイトルと比較すると:『ファイアーエムブレム 風花雪月』約300万本、『スーパーマリオメーカー2』589万本、『ARMS』約247万本。完全新作IPとしては十分な成績だが、批評の高さと売上の間にはギャップがある。
V. なぜ評判ほどのヒットにならなかったのか?

アナリストの間では以下の3つの要因がよく挙げられる。
1. 新規IPでファンの基盤がなかった
プレイヤーはオリジナルタイトルに対して慎重になりがちで、口コミが広がるには時間がかかる。プラチナゲームズは開発に強みがあるがマーケティングは得意ではなく、プロモーションは任天堂の予告編やツリーハウスなどに限られていた。
2. Switch専用であることが潜在的な顧客層を限定した
Switch専用だったため、『デビル メイ クライ5』や『ベヨネッタ』といった同種のタイトルが主戦場とするPlayStationやPCのアクションファンにはリーチできなかった。専売であることには任天堂のサポートという利点もあったが、市場は小さくなった。
3. アクションゲームの市場はもともとニッチ
プラチナゲームズのブランド力は任天堂ファーストパーティほど強くない。『ベヨネッタ』シリーズは10年以上にわたって批評家から愛されてきたが、累計売上は数百万本程度である。アクションゲームというジャンル自体が、RPGやプラットフォーマーよりも市場規模が小さい。
それでも、完全新作IPとして130万本は成功と言える。少なくとも任天堂にこのフランチャイズの可能性を認めさせるには十分だった。
VI. IPの現状と続編の行方
今作の世界観やシステムは、明らかに続編を意識してデザインされている。多くの伏線が残され、エンディングも完全に閉じていない。
年表:
- 2019年: 田浦ディレクターがインタビューで「まだ使えていないアイデアがたくさんある。続編を作る機会があれば、ぜひやりたい」と発言。
- 2023年: プラチナゲームズのスタジオヘッド稲葉敦志が、田浦が新プロジェクトを進めていることを認め、「近いうちに発表できれば良いね」と示唆。同年、IPの権利が整理され、任天堂が『アストラルチェイン』の単独所有者となった。
- 噂: 未確認のオンライン情報では、『アストラルチェイン2』が開発中で、新レギオン、エレメント融合システム、空母バトルなどが含まれるとされている。しかし現時点で任天堂もプラチナゲームズも続編を正式に発表しておらず、こうした情報は憶測として扱うべきである。
全体として、IPの権利関係は明確になり、コアクリエイターは関心を示しているが、続編は未確定のままである。
VII. 2026年現在、遊ぶ価値はあるか?
『アストラルチェイン』をまだプレイしたことがない人に向けて、判断材料を挙げる。

遊ぶべき理由:
- ユニークなゲームプレイ、今も代替品なし
2026年になっても、『アストラルチェイン』のようなアクションゲームは他にない。主人公とレギオンを同時に操るスタイルは、Switch上でも唯一無二の体験を提供する。 - ボリュームは十分
メインストーリーは15〜20時間。全収集・全Sランクを目指すと40時間以上。5種類のレギオンの育成とスキルカスタマイズによって繰り返し遊ぶ価値がある。 - 価格は手頃
中古のパッケージ版は1,500〜2,500円程度。ニンテンドーeShopでも不定期にセールが実施される。この価格でプラチナゲームズの最高水準のアクションを楽しめるコストパフォーマンスは高い。
注意点:
- 探索パートがテンポを損なうことがあり、一部のステージは洗練されていない
- 無口な主人公が重要なストーリーの場面で違和感を生む
- オリジナルのSwitchハードでは、負荷の高い戦闘で軽微なパフォーマンス低下が見られる(特に携帯モード)
結論: 『ベヨネッタ』『デビル メイ クライ』『ニーア オートマタ』が好きなら、『アストラルチェイン』は今でもプレイする価値がある。2026年になっても、これに似たアクションゲームはほとんど存在しない。今からでも決して遅くない。
著作権表示:
本記事で引用されているゲームのスクリーンショット、キャラクターイメージ、関連素材の著作権は、任天堂、プラチナゲームズ、およびそれぞれの権利者に帰属します。





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